2022年11月11日に公開された、新海誠監督の新作映画『すずめの戸締まり』。
本記事では、劇中のメインキャラクターのひとり「岩戸環(いわと たまき)」さんの疑問や謎について考察・解説しています。
岩戸環(いわと たまき)のプロフィール
声優 | 深津絵里 |
年齢 | 40歳 |
身長 | ? |
職業 | 漁業協同組合の総務部長 |
居住地 | 宮崎県 |
すずめの母「岩戸椿芽(いわと つばめ)」の妹。
マッシュショートの髪とパンツスーツが似合うキリッとした美人。
宮崎県の海辺の町の漁協で働く。
宮崎住まいが長いためか、宮崎弁の訛りがある。
12年前の震災時、母を亡くし孤児となったすずめを引き取り一緒に住み始める。(環28歳、すずめ4歳の時)
環さんは過保護すぎて重い? 本当に毒親(毒叔母)なのか考察
『すずめの戸締まり』の劇中で、環さんは家出したすずめを心配するあまり、いろいろと過保護気味の行動を取ります。
頻繁に電話をかけたり、長文のLINEメッセージを送ったり、さらにはすずめを追いかけて旅に同行するなど。
これらの環さんの行動は、すずめにとっては「ちょっとうざい」らしい。
環さんの電話を一方的に切ったり、メッセージに返信しなかったり。
挙句の果てには、サービスエリアでの口論の際「環の心配が重い」と叫んでしまいます。
『すずめの戸締まり』の劇中は主にすずめ視点で進んでいくため、どうしても環さんの行動や言動が過保護に見えてしまいますが、実際のところどうなのでしょう?
ここからは、
- 環さんは、本当に過保護すぎて重い人なのか?
- 毒親(毒叔母)になってしまっているのか?
などを考察してみます。
そもそも毒親とは
環さんの過保護について考える前に、そもそも毒親とは何なのか。
毒親とは、子供にとって「毒」になる親、つまり子供に悪影響を及ぼす親のことです。
この言葉を作った人によると「子どもの人生を支配し、子どもに害悪を及ぼす親」を指す言葉とのこと。
毒親はよく「過干渉」と言い換えられたりします。
毒親(過干渉)と過保護の違い
- 過干渉
- 過保護
似ている言葉ですが、内容は全然違います。
過干渉はひとことで言うと、”親の望み”を優先して、子供を育てること。
子供を抑圧したり、我慢を強いることが多いです。
過干渉は虐待の一種であり「保護者が我が子を一人の主体的な人間として認めず、その子供の意思や思考、自我の発達や自主性などを否定して、親が望む能力や思考を持つ子供に育てること」である。
出典:Wikipedia
虐待の一種とあるように、過保護よりもひどいものです。
例えば、子供がやりたくもない習い事をいくつも強制させるなど。
子供のためと言いながら実は「優れた子供を育てた親」というステータスを欲するゆえの行動だったりが過干渉と呼ばれます。
この言葉が良い意味で使われることはほとんどないですね。
過保護はひとことで言うと、”子供の望み”を優先して、子供を育てること。
過保護は、「子供の意思が尊重されすぎ過剰に欲求を満たそうとしたり、被保護者自身に責任のある状況下で責任を肩代わりし過ぎてしまうこと」である。
出典:Wikipedia
子供を愛するがゆえに何でも望みを叶えてあげる、それが実は子供の教育に良くないものだったり。
子供を甘やかしすぎてしまうのが過保護と呼ばれます。
度が過ぎる過保護は、子供から「うざい」「重い」と受け取られることも。
過干渉と違って、良い意味でも悪い意味でも使われる言葉ですね。
結論から言うと、環さんはまったく毒親(毒叔母)ではありません。
また、やや過保護ぎみではありますが、そうなるのも仕方ないというか、理解できる点が多いです。
以下で、環さんとすずめのエピソードを紹介しつつ、詳しく解説していきます。
環さんの過保護?愛情?エピソードを紹介
『すずめの戸締まり』の劇中には、環さんとすずめの関係性がわかるシーンがたくさん出てきます。
- 高校生のすずめにキャラ弁を持たせる
- すずめとの思い出写真を自宅の壁いっぱいに飾る
- 地震発生時にすずめを心配して自宅に戻る
- フェリーに乗ったすずめを電話で問い詰める
- 四国にいるすずめに長文のLINEメッセージを送る
- 関西にいるすずめに1日に55件のメッセージを送る
- すずめを東京まで追いかけて、東北への旅に同行する
上から順番に見ていきましょう。
高校生のすずめにキャラ弁を持たせる
環さんは、毎朝すずめのためにお弁当を作っています。
単なるお弁当ではなく、
- 海苔や桜でんぶで雀の顔になっているおにぎり
- にっこり笑顔がついた卵焼きやウィンナーやエビフライ
といった、手の込んだキャラ弁です。
すずめが高校で弁当を広げると、友人に「きゃー、出たわー、おばさん弁当!」「今日も愛が深えねえ」とからかわれてしまうほど。
すずめは友人のからかいに対して笑って返しつつも、うまく笑顔が作れないようで、環さんのキャラ弁を心から喜んでいるわけではなさそう。
もしかしたらすずめは「高校生にもなってキャラ弁はやめてほしい……」と少し恥ずかしく思っていのるかも。
過保護というより、環さんのすずめに対する愛情が伝わってくるシーンです。
愛情がなければ、わざわざ手の込んだ弁当など作らないでしょうから。
環さんが高校生のすずめにキャラ弁を作る理由とは
予想ですが、子供の頃のすずめがキャラ弁を喜んでくれたからではないでしょうか。
環さんは12年前の震災後、4歳のすずめを引き取って一緒に暮らし始めました。
すずめは母:椿芽を亡くしたばかりなので、きっと深くふさぎ込んでいたのだと思います。
環さんも「どうやってすずめを元気づければいいのかわからない」という状況だったのでは。
そんな時に作ったキャラ弁で、ふさぎ込んでいたすずめが喜んでくれた、笑ってくれた。
その思い出がずっとあるからこそ、すずめが高校生になってからもキャラ弁を作ってあげているのかもしれません。
すずめの方もそれがわかっているからこそ「もうキャラ弁じゃなくていいよ」と言い出せないのかも?
すずめとの思い出写真を自宅の壁いっぱいに飾る
環さんとすずめが住む一軒家には、これまでの思い出写真が壁いっぱいに飾られています。
すずめの成長と共に撮影した、各イベントごとの写真があるようで、
- 学芸会
- 運動会
- 小学校・中学校の卒業式
- 小学校・中学校・高校の入学式
といった写真が飾られているようです。
小説版では、写真についてのすずめの心情が語られています。
環さんは必ず満面の笑みで記念写真を撮り、隣に写る私の笑顔はいつでもすこし淡い。
そんな写真が、我が家にはあちこちに飾ってある。
出典:新海 誠. 小説 すずめの戸締まり
写真の中のすずめはまだ母の死を引きずっているのか、心から笑えていないようですね。
家族の思い出写真を飾るのは、もちろん過保護ではないですね。
過保護じゃなく子供との関係がちょうどよい家庭でも、家族の写真を飾るのはいたって普通のことです。
地震発生時にすずめを心配して自宅に戻る
宮崎でミミズによる大きな地震(最大震度6弱)が起こった際、環さんは電話に出ないすずめを心配し、自宅まで戻ってきます。
この時のすずめは「ダイジンを追いかける草太」を追いかけるため、環さんの手を振り払い、道路へと走り去ってしまいます。
走り去っていくすずめに向かって環さんは「ちょっとこら、待たんけ!」と叫んでいましたね。
ぜんぜん過保護ではないと思います。
大きな地震があった時に、家族が電話に出なかったら心配するのは当然ですし、自宅に戻っているかもと考えるのも当然ですね。
フェリーに乗ったすずめを電話で問い詰める
「ダイジンを追いかける草太」を追いかけるため、宮崎の港から愛媛行きのフェリーに乗ってしまったすずめ。
そんなすずめに、環さんは心配して電話をかけていました。
すずめはフェリーに乗っていることを隠し、友達の家に泊まるからと嘘をつきつつ、明日はちゃんと帰るから心配しないでと話します。
環さんはそれでも心配のようで、
- 部屋の救急箱は何に使ったの? 怪我したんじゃないの?
- 煮干しなんてそんなに好きじゃないのになんで出したの?
- ひょっとして変な男と付き合っているんじゃないの?
といった質問を浴びせます。
すずめは大丈夫だからと電話を切った後に、ため息をついていましたね。
小説版では、この時のすずめの心情が書かれています。
ああ、こんなんじゃなおさらに心配させてしまう。あの人の過保護っぷりを加速させてしまう。
出典:新海 誠. 小説 すずめの戸締まり
すずめ自身も、環さんを「過保護」だと思っているみたいです。
心配のあまり色々と質問をしすぎる点は、ちょっとだけ過保護かもしれませんね。
ただ、すずめの母がシングルマザーだったことを考えると「すずめは変な男と付き合っているんじゃないか」と心配する気持ちは理解できます。
四国にいるすずめに長文のLINEメッセージを送る
成り行きでフェリーに乗り、四国の愛媛県まで来てしまったすずめ。
すずめは、みかん畑で出会った同い年の女子高生「千果(ちか)」の家が経営している民宿に泊まります。
民宿の部屋で千果と一緒に晩御飯を食べている時に、環からの長文メッセージが届きます。
劇中のシーンでは一瞬しか映りませんでしたが、スマホの画面を埋め尽くすほどの長文でしたね。
何が書いてあったんだろう?と気になるところ。
小説版では、長文メッセージの内容の一部が書かれています。
鈴芽、口うるさいと思われたくはないけれどいろいろ考えた末やっぱり鈴芽には分かってもらいたいと思いこれを書いています/
最後まで読んでもらえると嬉しいです/
まず鈴芽に理解してほしいのはあなたはまだ子供、未成年だということです/
鈴芽はちゃんとしっかりした子だとは思うけれど一般的にも経済的にも身体的にも十七歳というのはやはりまだ子供です/
あなたは未成年であり、色々な考え方はあると思うけれど私はあなたの保護者であり──
出典:新海 誠. 小説 すずめの戸締まり
この長文メッセージをすずめが読んでいる最中にも、さらに追加で長文メッセージが来ていました。
これはまあ過保護じゃなくて、仕方ないことなのではと思います。
友達の家に泊まったはずのすずめが、なぜか愛媛にいるわけですから、より心配が増したはずです。
それに、すずめが電話だとろくに話してくれないため、環さんはこうしてメッセージで伝えるしかなかったのでしょう。
関西にいるすずめに1日に55件のメッセージを送る
ダイジンを追うため、兵庫県の新神戸駅から東京行きの新幹線に乗ろうとするすずめ。
神戸で出会ったスナックのママさん「ルミ」と別れを告げた後、環のことを思い出します。
「やっばい、環さんのこと完全に忘れてた!」と、通知をミュートしていたLINEを開くと、環さんから55件ものメッセージが届いていました。
このシーンのすずめの反応によると「迎えに行く」というメッセージもあったようですね。
これも過保護じゃなくて、仕方ないこと……だと思います。
すずめが愛媛を出てから神戸にいる間、既読スルーばかりでずっと連絡が取れなかったのですから、環さんは相当心配したのでは。
すずめを東京まで追いかけて、東北への旅に同行する
東京のミミズと後ろ戸を閉じたあと、自分が幼い頃に入ったことのある後ろ戸を探すため、東北の実家を目指すことにしたすずめ。
すずめは新幹線に乗るため、ボロボロになってしまった服のまま、東京駅へ向かいます。
すると途中の御茶ノ水駅で、すずめを呼び止める声。
赤いオープンカーに乗った、草太の友人の男子大学生「芹澤(せりざわ)」でした。
芹澤は草太の行方を探すため、居場所を知っているらしいすずめに「草太のところに行くなら俺が連れてってやる」と言い、車に乗せようとします。
と、そこへ環さんが登場。
芹澤を問い詰めつつ、すずめに帰ろうと促す環さん。
しかしすずめはまだ帰れないと言い、芹澤の車に乗り込みます。
すると環さんは「待たんね」「一人じゃいかせんから!」と、一緒に車に乗り込んでしまいます。
なんやかんやで、すずめの後ろ戸探しの里帰りの旅に、環さんも同行することになったのでした。
う〜ん……これも過保護じゃなくて、仕方ないかも。
環さんは神戸にいた時のすずめに「迎えに行く」というメッセージを送っています。
それをすずめが既読スルーしてしまってますから、余計に心配が募ったのでは。
しかも、いざすずめを見つけてみたらボロボロの格好で、何やらホスト風の男と一緒に車でどこかへ行こうとしている。
これは過保護な親じゃなくても、連れ戻すもしくは同行したくなるはず。
以上、環さんとすずめのエピソード紹介でした。
結論|毒叔母ではない。やや過保護ぎみだけど、そうなるのも仕方ないかも
環さんはまったく毒叔母ではありませんね。
毒親は「子どもの人生を支配し、子どもに害悪を及ぼす親」です。
劇中の環さんの行動を見ていると、すずめをただただ心配するあまり、やや過保護ぎみの行動をしてしまっているだけです。
また、そうなるのも仕方ないというか、理解できる点が多かったですね。
『すずめの戸締まり』の劇中は、主にすずめ視点で進んでいきます。
そのためどうしても環さんの行動や言動が過保護に見えてしまいますが、
環さん視点で劇中のすずめの行動を考えてみると、さもありなん。
- 大きな地震があって心配しているのに電話に出ない
- すずめが怪我した男?を家に上げて救急箱で手当をしていたかもしれない
- しかも急に家を飛び出して行ってしまった
- 友達の家に泊まると言っていたのに、じつは愛媛へ行っていた
- 電話で質問をしてもはぐらかされてしまう
- LINEメッセージを送っても既読スルーで返事がない
- 追いかけて見つけてみたら、ボロボロの服でチャラい男の車に乗ろうとしていた
もちろん、これらの出来事が起こる前から、すずめの環さんに対する印象は「過保護」だったようなので、実際に環さんが過保護すぎるという可能性も十分にあります。
ですが、少なくとも劇中の出来事に限れば「すずめの行動や態度が、環さんを過保護にさせてしまっている」のではないかな〜と思いました。
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駐車場の口論で、環さんがすずめに放った言葉は本心だったのか考察
サービスエリア(道の駅)の駐車場で起こった、環さんとすずめの口論。
映画館でこのシーンを見た時は「うわぁ〜あまりに重すぎる……この後の展開はどうなるの!? 」と思いましたね。
このシーン、おそらく『すずめの戸締まり』の中でも一番キツいというか、重いシーンだったのではないでしょうか。
ここからは、
- 環さんはなぜ、すずめにキツい言葉を放ってしまったのか?
- 環さんの言葉はどこまでが本心だったのか?
という点を中心に考察していきます。
2人が口論になった原因とその内容をおさらい
環さんとすずめが口論になるまでの流れと、どんな口論だったのかをざっくりと振り返ってみます。
※覚えてるからおさらいはいらないよ。という人はこちら⬇︎
環さんはなぜ、すずめにあそこまでキツい言葉を放ってしまったのか?
芹澤が運転するオープンカーに乗り、宮城の実家があった場所へ向かうすずめと、それに同行する環さん。
3人は、宮城県気仙沼にある海沿いの道の駅「大谷海岸」で休憩します。
食事もとらずに駐車場で車に乗ったままのすずめに、環さんは「ちゃんと話してほしい」と尋ねますが、
すずめは「……ごめん。上手く話せない」とかわし、さらに「話してもわからないことだから。環さんには」と言い放ちます。
それが原因で口論になり、すずめは
- 付いてきてなんか頼んでない
- 環の心配が私には重い
と、言ってしまいました。
環さんの様子が変わり、深いため息のあと「もう私ーーしんどいわ……」と呟き、暗く沈んだ顔で話し始めます。
その言葉は、すずめを引き取ったことを後悔するような、すずめにとってあまりに重い告白でした。
口論はさらに激しくなり、すずめは言いたくもない言葉を環さんに浴びせます。
ついには環さんの方からも、言ってはならない言葉が。
「あんた、もううちから出て行きんさい!」
「私の人生返しさい!」
この時、すずめは異変に気づきます。
「これは環さんじゃない」と。
なぜなら、目の前にいる環さん?が、口元は笑っているのに目では涙を流していたからでした。
すると環さんの後ろに、サダイジンと名乗る大きな黒猫が登場。
黒猫に取り憑かれていた様子の環さんは意識を失い、口論は終わりました。
環さんはなぜ、すずめにあそこまでキツい言葉を放ってしまったのか?
考えられる理由は2つ。
- サダイジンが環さんに取り憑き、心にもない言葉を無理やり言わせた説
- サダイジンが環さんに取り憑き、本心にある黒い感情を出させた説
有力なのは後者の「本心にある黒い感情を出させた説」です。
なぜあんなことを言ってしまったのかと後悔する環さん
駐車場での口論のあと、環さんは道の駅の建物へ戻り、芹澤の前で
「私、ちょっとおかしいみたい……」
「なんであんげなことーー」「言ってしまったちゃろう……」
と言いながら、泣き崩れていました。
この時点では、環さんの後悔の理由が、次のどっちだったのかはまだわかりません。
- どうして思ってもいない言葉を言ってしまったのだろう
- どうして本心が出てしまったのだろう
しかし映画の後半、環さんとすずめが自転車に二人乗りするシーンのセリフで
環さんがすずめとの口論で言った言葉は「紛れもない本心だった」とわかります。
自転車の二人乗り中にすずめと仲直りする環さん
『すずめの戸締まり』劇中の後半、環さんが自転車の後ろにすずめを乗せて、すずめの実家へと走るシーン。
環さんは、前を向いたまま、すずめにこう言っていました。
「駐車場で私が言ったことやけど」
「胸の中でおもっちょったことはあるよ……。」
「でも、それだけでもないとよ」
そして繰り返し、
「ぜんぜん、それだけじゃないとよ」
すずめも「ごめんね」と謝り、2人は仲直りしました。
このシーンの環さんのセリフから、口論での環さんの言葉は一応は本心ではあることがわかります。
でも「それだけじゃない」と環さんが言うように、きっと、本心の中のわずか1%程度の黒い感情が、サダイジンによって出てしまっただけなのではないでしょうか。
残りの99%は、すずめに対する愛情とか、すずめと一緒に過ごす幸せだとか、そういったプラスの感情で占められているじゃないかと思います。
サダイジンが、環さんの心の深いところにあった黒い感情を引き出した
おそらく環さんは、心の深いところにあった黒い感情を、サダイジンによって引き出されてしまったのではないでしょうか。
環さんが自分の中でも言語化できていなかった、モヤモヤとした感情。
たとえば、自分の同級生から「結婚しました」という知らせを受け取るたびに、すずめをもし引き取っていなかったら自分も今頃……と考えてしまい、モヤっとしたり。
たとえば、忙しさのあまり疲れ切っているところに、すずめから反抗的な態度を取られて、モヤっとしたり。
きっと環さんは、すずめを愛してその幸せを願いながら、愛情たっぷりに育てていたはずです。
でも完璧な人などいないわけで。
環さんの人生に対する不満の矛先が、言葉にはしなくとも、すずめに向かっていたことがごく稀にあったのかも知れません。
そんなモヤモヤとした感情が、サダイジンによって表面へと引き出されてしまった。
そして口論の激しさに乗って、言うはずではなかったキツい言葉をすずめに浴びせてしまったのでは。
あくまで予想に過ぎませんが、ぼく個人としてはこんなところなのではないかな、と思っています。
サントラ収録の曲「Tamaki」で、環さんのすずめに対する想いがわかる
映画『すずめの戸締まり』のサウンドトラックに収録されている、RADWIMPSの野田洋次郎さんが歌う曲「Tamaki」。
「Tamaki」と言う曲名の由来は、もちろん映画に出てくる岩戸環(いわと たまき)さんです。
この曲は映画本編では流れませんが、歌詞が「環さんのすずめに対する想い」になっています。
曲「Tamaki」の歌詞はこちら▼
映画本編を観た後にこの曲を聞くと泣けるのですが、
とくに聞いてほしいフレーズはこれ。
時に親子になった 時に恋人だった
時に家族で友達で姉妹で時に赤の 他人だった
出典:RADWIMPS「Tamaki」の歌詞より
環さんにとってすずめは、単純に姪というだけではなくもっと複雑な気持ちがあったんだなと感じ取れます。
確かに環さんにとって、姪とはいえ親を亡くした4歳の子供を引き取って育てるというのは、なかなかにハードな選択だったと思います。
環さんは駐車場の口論のシーンで、すずめを引き取った時の28歳という歳を「人生でいちばん自由な時やった」と言っていました。
それからの12年間、環さんは自分に時間を使う代わりに、すずめに時間を使ってきたのでしょう。
そんな積み重ねがあったからこそ、曲「Tamaki」の歌詞にあるような気持ちになったんだな……としんみりしてしまいました。
ぜひ、曲「Tamaki」を聴きながら歌詞を読んでみてください。
環さんとすずめの今後はどうなる?
『すずめの戸締まり』劇場版のエンディング(スタッフロール)では、環さんとすずめが、神戸のルミさんのスナックや、愛媛の千果の民宿に立ち寄るイラストが出てきます。
劇場版のエンディング明けでは、季節が変わり、すずめが地元の町の坂道で、再び草太に出会うところで終わっていますが
小説版では、エンディング〜数ヶ月後の間の出来事が書かれています。
それから、何ヶ月かが経った。
私は毎日学校に通い、以前よりもいくぶん熱心に勉強をするようになり、来年の受験に備えていた。
環さんと口げんかすることが増え、でもそれはどこか気持ちの良い思考の交換作業でもあり、彼女の作るお弁当は相変わらず凝りに凝っていた。
出典:新海 誠. 小説 すずめの戸締まり
どうやら、環さんとすずめは口げんかすることが増えてしまったよう。
しかしすずめが「気持ちの良い思考の交換作業」と語っているように、きっと前向きなものなのでしょう。
これまでのすずめは環さんと良好な関係でありながら、一方では過保護だと思い「放っておいてほしい」という感じでした。
対話をせずに避けてきた部分もあったかもしれません。
劇中でもそんなところがありましたが、今後はきっと、より良好な家族関係を築いていくのではないかな、と思います。
環さんと岡部稔(おかべ みのる)の関係 & 今後の展開を考察
ここからは、環さんと漁協の同僚「岡部稔(おかべ みのる)」の関係を紹介しつつ
- 2人の仲は今後どうなっていくのか?
を考察してみます。
漁協の同僚の岡部稔に片想いされている
環さんは、同じく漁協で働く男性「岡部稔(おかべ みのる)」に何年も片想いされています。
岡部稔からは「環さん」と呼ばれ、環さんの方も「稔くん」と名前で呼んでいることから、ある程度は気やすい関係なのでは。
ただし職場に他の「岩戸さん」「岡部さん」がいて、混同しないように名前で呼んでいる可能性もありますが。
環さんが稔の恋心に気づいているのかいないのかは、劇中ではわかりません。
けっこう適当にあしらっているところを見る限り、稔の恋心に気づきつつも、あえて気づかないふりをしているかもしれませんね。
「すずめを心配する環さん」を思いやる稔くん
稔くんは、すずめが家出してから元気がない環さんを心配して、励ましの言葉をかけたり何かと協力したりしています。
しかし元々の性格ゆえか恋心ゆえか、いまだに環さんとの付き合い方がわかっていないようで、環さんに塩対応されることが多いようです……。
稔くんの空回りエピソード
- すずめの家出について、自分の経験を交えながら環を明るく励まそうとしたら、環に「君の話と一緒にせんでくれん?」と冷たく言われてしまう
- 環さんが仕事を休んですずめを追いかけると言った際、稔くんが「ワシも一緒に休もうかな……」とこぼしたら、環さんに「なんでよ?」と睨まれてしまう
空回りすることが多い稔くん、頑張れと応援したくなりますね。
今後、環さんは稔くんと付き合う可能性はある?
環さんが稔くんと付き合う可能性は十分にある! のではないでしょうか。
『すずめの戸締まり』のエンディングで、フェリーに乗って宮崎に戻った環さんとすずめを、稔くんは港で出迎えています。
小説版では、その時のすずめから見た環さんの様子が書かれています。
環さんは面倒くさそうな表情を見せつつも、どこか嬉しそうにも見えた。
出典:新海 誠. 小説 すずめの戸締まり
稔くんの出迎えをめんどくさがりながらも嬉しく思う、それは、これまでの環さんと稔くんとの付き合いの延長にある感情なのかも。
劇中での稔くんが環さんを想っての言葉や行動は、どれも冷たくあしらわれてしまっていますが、実は環さんは内心嬉しく思っていたのかもしれません。
今後、稔くんが環さんと恋人として付き合うためには、押してダメなら引いてみるとか、すずめに環さんの落とし方を相談してみるとか、これまでと違うかたちでアプローチしてみるのが良いのでは。
むしろ結婚までゴールインしてほしい
個人的には、環さんと稔くんが今後付き合って、そのまま結婚までゴールインしてくれれば良いな、と思います。
稔くんの正確な年齢は、劇場版でも小説版でもパンフレットでも明かされていませんが、見た目からおそらく30代前半あたりではないでしょうか。
40歳の環さんと、30代前半(予想)の稔くん。
年の差というほど大きく離れていませんね。
環さんは28歳の時にすずめを引き取ってから12年間、自分の幸せよりもすずめの幸せを優先してきました。
子離れとはちょっと違うかもですが、そろそろ環さんには自分を優先して、幸せをつかんでほしいなと思います。
以上、すずめの叔母:環(たまき)の疑問や謎を考察!でした。
『君の名は。』『天気の子』
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