「100日後に死ぬワニ」とは
出典:ねとらぼ
ネット上で話題になっている4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」
主人公のワニの何気ない日常が描かれている作品です。
漫画家/イラストレーターの「きくちゆうき」さんが、毎日1ページずつツイッターで投稿(連載)しています。
この4コマ漫画、今めちゃくちゃバズっています。
どれくらいバズっているかというと、次の通り。
「100日後に死ぬワニ」は、作者の「きくちゆうき」さんが毎日1日ずつツイッターで投稿しているのですが、なんと1つの投稿に10〜15万以上のいいね!がつくほど。
「きくちゆうき」さんのフォロワーも「100日後に死ぬワニ」の連載が始まってから50万人以上も増えています。
フジテレビ系ネットメディアの「FNN.jpプライムオンライン」による特集の動画もありました↓
9分30秒の動画ですが、4分ぐらいまで見れば「100日後に死ぬワニ」とは何なのかすぐにわかるはず。
「100日後に死ぬワニ」の内容をさらっと紹介
主人公のワニ(おそらく性別はオス)は、人間でいうと20歳前後なのでしょう、大学生のような生活をしています。
一人暮らしを満喫したり、友達と遊んだり、バイト先の先輩(おそらく性別はメス)に恋をしたり。
出典:ねとらぼ
ほんっとうにほのぼのとした日常の4コマ漫画で、起承転結もありません。
しかし、この主人公ワニ。
「100日後に死ぬこと」が決まっています。
1ページに1日ずつ描かれている4コマの最後にも「死まであと〇〇日」という言葉が描かれており、強烈なインパクトがあります。
「100日後に死ぬワニ」についての感想とコメント
何気ない日常4コマ漫画なのに「100日後に死ぬこと」がわかっているだけで、急に面白さが倍増するんですよね。
いや、面白いというより、切ない気持ちになる。
ネットの書き込みで、こんなコメントをしている人もいました。
この漫画を読んでいる人の中には、主人公ワニよりも早く死ぬ人もいるんだよな…
それが自分かもしれないし。
うろ覚えですが、こんな感じのコメントでした。
まさにそうだなと。
読者の数から考えてみると、まったくもってあり得る話です。
2020年1月25日時点で、作者の「きくちゆうき」さんのツイッターフォロワーは66万人。
その66万人のうち「100日後に死ぬワニ」の連載が始まってからフォローし始めた人が50万人以上います。
全員が読者ではないとしても、半分の25万人は継続して読んでいるはず。
「100日後に死ぬワニ」は多くのニュースサイトで取り上げられていますから、さらに読者数は多くなるでしょう。
さて、現時点で「100日後に死ぬワニ」の寿命は残り56日となっていますが、果たして読者25万人が56日後も全員生きているかというと、そんなことはないはずです。
たとえば交通事故。
日本では毎年40万件近くの交通事故が起こり、3000人以上が亡くなっています。
交通事故総合分析センターによると、
2019年の交通事故による死者数は3215人、
2018年では3532人です。
交通事故発生状況 – 交通事故総合分析センター
毎月300人近くが、交通事故で亡くなっているわけです。
自分が交通事故に遭うなんて思いもしないですから、何気ない日常から突然に交通事故に遭い、亡くなるということ。
「100日後に死ぬワニ」と同じような状況ですね。
主人公ワニの様子も、自分が100日後に死ぬなんてことは知らないはずですから。(そんな描写が一切ないため)
「100日後に死ぬワニ」の読者25万人(仮)のうち、交通事故に遭って亡くなる人が出る可能性はゼロではありません。
もちろん、ぼくも含めてです。
さらに、亡くなる原因は交通事故だけではありませんからね。
ネットで誰がが言っていた言葉。
この漫画を読んでいる人の中には、主人公のワニよりも早く死ぬ人もいるんだよな…
それが自分かもしれないし。
この言葉は、冗談でもなく本当にあり得る話、というわけですね。
それを考えると、少し恐ろしくなりました。
「100日後に死ぬワニ」が、なぜ多くの人の心を打つのか考えてみた
多くの人の心を打ち、ものすごくバズっている「100日後に死ぬワニ」
なぜこんなにも多くの人の心を打つのか、その理由を考えてみました。
出てきた理由は3つ。
- 「いつか死ぬこと」を、自分ごととして考えさせられるから
- 押し付けがましくなく、多くの人に受け入れられるから
- 「バズる=多くの人が共感する」ための要素がそろっているから
順番に見ていきましょう。
「いつか死ぬこと」を、自分ごととして考えさせられるから
主人公は「ワニ」だし、描かれている日常も何気ないありふれたものです。
「100日後に死ぬ」のではなかったら、ほとんどの人はこの漫画を読まないはず。(ディスっているわけではないです)
ワニと同じような生活をしている大学生なら「あるある」と共感しながら暇つぶしに読むかもしれませんが、
ほとんどの人は「ふーん、擬人化したワニのほのぼの日常マンガか」と思い、すぐに興味を失うでしょう。
しかし主人公のワニは、100日後に死にます。
「100日後に死ぬ」つまり「いつか死ぬ」というのは、全ての人に当てはまる「究極のあるある」です。
ワニが過ごす大学生のような日常を経験したことがない人でも、強烈に「自分ごと」として興味が引かれます。
最初に「え、このワニ、100日後に死ぬんだ…。切ない。かわいそう。」と感じた後、「それじゃあ自分はどうなのか?」と考えずにはいられません。
たとえそこまで頭の中で考えなかったとしても、心の何処かにそんな感情が残ります。
ぼく自身、最初は「100日後に死ぬのか、切ないなぁ」とまでは思いましたが、最初はそこで思考は止まってました。
「じゃあ自分はどうなのか?」
「100日後に生きている保証があるのか?」
「この日常が当たり前ではない可能性を意識して生きているか?」
というような哲学的なことは、最初はほとんど考えてませんでしたね。
けれども、心のどこかに「単なる日常マンガではない」という、印象というか引っかかりはありました。
そして、新しく投稿されるワニの1日をまた読むたびに、その印象が強くなる。
最終的には「自分の100日後はどうなのか?」という考えが生まれていました。
普通のほのぼの漫画だと、こんな気持ちにはなりません。
読んだ後に「共感できるあるあるだったなぁ」とか「優しい気持ちになったなぁ」とかの感想は出てきますが、それだけです。
しかし「100日後に死ぬワニ」は、少し読めばワニに同情して切なくなり、さらに読めば「自分もいつか死ぬこと」を考えさせられます。
この感情を面白いと言っていいのかは分かりませんが、心を打つのは確かですね。
押し付けがましくなく、多くの人に受け入れられるから
「100日後に死ぬワニ」は読んでいくうちに自分ごととして考えてしまう4コマ漫画ですが、
「自分の100日後や未来はどうなんだろう?」と考えるまでの過程がすごく自然です。
押し付けがましくない。
だから多くの人に受け入れられます。
このマンガの作者「きくちゆうき」さんのインタビューには、こんな質問と回答があります↓
なぜ、この作品の連載を始めたのか?
出典:大反響マンガ なぜ心打つ? 「100日後に死ぬワニ」 – FNN.jpプライムオンライン
「死ぬ日というのが、必ず訪れるわけで、それ(死)を意識しながらだと、生き方・行動がよりいい方向にいくのではないか。それ(死)を意識してもらえるようなきっかけになる作品をつくれたらいいなと」
このインタビューからわかるのは、
「100日後に死ぬワニ」という作品には「死を意識することで、読者の人生がより良くなってほしい」といった確かな目的があるということ。
しかし、マンガの中では
「あなたは自分の死について意識していますか?」
「100日後に生きている確かな保証がないことを知っていますか?」
などの問いかけは一切ありません。
もしもこのマンガに
上記のような押し付けがましい問いかけがあったらどうでしょう。
きっと「何かの宗教の啓発マンガなのか…?」と不審に思うはず。
たとえ「ワニの日常を描いたマンガ、ただしワニは100日後に死ぬ」というかなり興味をひく作品だとしても、敬遠する人は多くなりますよね。
しかし実際、「100日後に死ぬワニ」に書かれているのは
4コマの最後に書かれている(ワニの)死まで〇〇日 という言葉だけ。
たったそれだけなのに、思わず考えてしまいます。
以上のことから「100日後に死ぬワニ」が多くの人の心を打つ2つ目の理由は
押し付けがましくないのに考えさせられる作品(自分ごとになってしまう作品)だから、と言えますね。
「バズる=多くの人が共感する」ための要素がそろっているから
「100日後に死ぬワニ」は、ツイッターで投稿されており、SNSでめちゃめちゃバズっているのは上で書いた通り。
SNSの本質は「共感」です。
自分が経験したこと・感じたことを誰に共感してほしい。逆に、共感できることを知りたい。
SNSを使う理由には、そんな気持ちが根底にあります。
その点「100日後に死ぬワニ」は共感を呼ぶための要素が詰まっています。
主な要素は2つ。
- いつか死ぬという「究極のあるある」
- わかりやすくて読みやすい「マンガ」という形
順番に解説しますね。
バズる要素①|いつか死ぬという「究極のあるある」
「究極のあるある」とは、少し上の文章で書いたように、どんな人にも当てはまる「あるある」です。
「いつか死ぬ」というあるある。
どんな人だろうと当てはまります。
いつか死にます。
「あるあるネタ」はその名前の通り、あるある!と思ってもらわなければ、面白いという評価はもらえません。
例えば「総理大臣あるある」などを発表したところで、あるあると共感できる人はまずいないでしょう。
歴代の総理大臣だけがわかるという、ニッチもニッチすぎる希少ネタです。
一方「100日後に死ぬワニ」は、いつか死ぬという、誰もが知っていたり意識したりする「究極のあるある」です。
主人公のワニのような生活をしたことがないとか、そもそも自分はワニじゃなくて人間だからとか、そんなのはささいなこと。
家族や親戚、知人が亡くなったり、毎日のニュースで死亡事故や事件などを知ったりなど、普段の生活は「死」が身近にあります。
とても他人事とは思えません。
以上のように「100日後に死ぬワニ」は「究極のあるある」を持っています。
つまり、人を選ばず共感させてしまう、という強烈な魅力がある。
だからバズる、ということですね。
バズる要素②|わかりやすくて読みやすい「マンガ」という形
ツイッターなどのSNSでバズるのは、多くが「わかりやすいコンテンツ」です。
複雑なニュースをわかりやすく要約したり、役に立つ知識を箇条書きで教えてあげたりするツイートなどが、よくバズっています。
特にバズりやすいのが「イラストを使った図解やマンガ」です。
文章を読むよりもすぐにパッと目に入り、さらっと読むだけで理解できますから、誰かにもオススメしたく(リツイートしたく)なります。
「100日後に死ぬワニ」は、マンガの中の吹き出しも少なく、複雑なストーリーなどもありません。
重要なことはただ一つ「主人公のワニが100日後に死ぬこと」
この設定だけ知っていれば、途中から読んでも全然大丈夫ですし、
「100日後に死ぬワニ」を知らない人にオススメした時も、すぐに感想が返ってきます。
つまり「100日後に死ぬワニ」は
自分が共感したから、誰かにオススメする。
オススメされた人もすぐに共感したので、また別の誰かにもオススメする。
という「共感の連鎖」がすごく生まれやすい作品です。
だからバズる、ということですね。
「100日後に死ぬワニ」が面白い理由のまとめ
「100日後に死ぬワニ」が面白い理由をまとめると、次の通り。
- 「いつか死ぬこと」を、自分ごととして考えさせられるから
- 押し付けがましくなく、多くの人に受け入れられるから
- 「バズる=多くの人が共感する」ための要素がそろっているから
- バズる要素①いつか死ぬという「究極のあるある」
- バズる要素②わかりやすくて読みやすい「マンガ」という形
たくさんの理由が重なった結果「100日後に死ぬワニ」は、たくさんの人に受け入れられ、共感され、バズっています。
だから、多くの人の心を打つ作品となっているわけですね。
以上、
「100日後に死ぬワニ」なぜ面白い?|多くの人の心を打つ3つの理由を考えてみた
でした。